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第23話 惟神が嫌いな男

Auteur: 霞花怜
last update Dernière mise à jour: 2025-06-17 18:00:37

 一つのピースを見付けてはめ込んだことで、バラバラだった総てのピースが繋ぎ合わさったような感覚。

 唐突に、頭の中が整理された。

 これまでに得た情報の総てが、直桜に一つの可能性を示唆する。

「確か、半年前の集会の時って、他部署が出払っていたせいで護たちも呼ばれたんだよね?」

「ええ、大規模な集会が関東各地でいくつも行われていて、人手が足りずに」

「何ヶ所くらい? いや、そうじゃないな……。13課全員が出払った?」

「そう、ですね。ほぼ総動員で、残っていたのは班長と副班長くらいだったと思いますが」

 直桜の表情を眺める護のが、戸惑いがちに答えた。

(場所は、どこでも良かったんだ。護と未玖がどこに来ても良いように、総ての場所で同じ実験を準備していた。集会の数は護と未玖を確実に動かすための、ブラフ)

 十年前の集会で生き残った少年に、仮に呪術が残っていたとして。

 13課の人間に保護され成長しながら、呪術が彼の中で育っていった。

 初めからの計画であったとしても、偶然に生存を知ったのだとしても。

 半年前に行われた実験は、未玖を完成させるためのものだったのではないのか?

(血魔術を解くのなんか、簡単だ。浄化をしながら未玖が血に触れるように仕向ければいい。未玖が穢れを浴びれば、呪詛は完成だったんだ)

 反魂儀呪の目的は、人の霊を使った呪詛を作ることに留まらなかった。

 更にその先、作った呪詛を鬼の体に宿すこと。

 それこそが、実験の本当の目的だったのではないのか。

「未玖は穢れに弱い体質だったわけじゃない。穢れを引き寄せ吸い込む呪術に犯されていたんだ。取り込んだ邪魅がキャパオーバーだったんだよ」

 護の、鬼の血が呪詛を完成させる最後の··だった。 

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